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【講習会レポート】クールヘッド・ウォームハート。鳥取県日南町が実践する、世代を越えた循環型林業

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【講習会レポート】クールヘッド・ウォームハート。鳥取県日南町が実践する、世代を越えた循環型林業

【講習会レポート】クールヘッド・ウォームハート。鳥取県日南町が実践する、世代を越えた循環型林業

2026年2月27日、第22回富士フォレストサポート講習会を開催いたしました。

ご登壇いただいたのは、鳥取県南西部、面積の約9割を森林が占める日南町の「日南町森林組合」の代表理事組合長 木村実次様です。

そこで語られたのは、植え、育て、伐り、加工し、使い、そしてまた植えるという「循環」を、机上の空論ではなく現実の経済と地域社会に落とし込んだ、実践の記録でした。

1. 循環の「エンジン」となる木材団地

日南町森林組合が基本方針として掲げるのは、以下の4つです。

①循環の森林(もり)づくり
②環境の森林(もり)づくり
③森林(もり)の人材づくり
④森林(もり)の価値づくり

この理念の具現化として、2006年に「日野川の森林(もり)木材団地」が生まれました。
一つの敷地内に、木材集積場市場木材加工チップ工場が同居しています。
需要と供給が同じ場所で生み出されるこの仕組みにより、木材取扱量は2007年から2024年までの間で約3倍に成長しました。

その心臓部で稼働しているのが、LVL(単板積層材)を製造する株式会社オロチです。同社が木材を絶え間なく使い続けることが、循環スピードを速めます。
まさに、木材団地を駆動する「エンジン」の役割を果たしています。

2. 足元を固め、木を使いきる(林業成長産業化モデル事業)

2017年から2021年にかけて、日南町は町を挙げて木材産業の基盤整備に取り組みました。
その内容は、林業の川上から川下まで、一切の隙がありません。

①データと機械による素材生産

まずは所有者への意向調査と、航空レーザーによる立木量・地形情報の収集

ベテランの設計士と変わらない精度を持つ路網作設支援ソフトで森を管理し、ハーベスタ等高性能林業機械で効率的に伐採・集材を行います。

②ブレーキをかける勇気

町に働きかけ、所有者の負担がゼロになる皆伐再造林の補助制度も新設し、森林所有者が皆伐再造林を選択しやすくなる体制をつくりました。

しかし伐採を終えいざ再造林となった時、「苗の安定供給」という壁が見えてきました。 そこで、コウヨウザンやセンダンの試験造林を行い、自ら苗木生産体制を構築しました。

日南町森林組合では、年間の伐採範囲をあえて「50ヘクタール」にとどめています。
苗木生産、植林、保育のサイクルを守るためです。

目先の利益や効率に流されず、全体を見渡してブレーキをかける。
長い目で森を考えるからこそできる決断です。

③端材すら無駄にしないカスケード利用

FSC®認証を取得して木材の価値を高め、LVL製品の生産で木材を使い切る、など、付加価値を付ける取組も活発です。

それでも製材時には端材木くずが出ます。

日南町森林組合はそれを燃料として燃やして終わらせず、大建工業株式会社、越井木材工業株式会社、株式会社オロチとタッグを組み、土壌改良材「DWファイバー」培地「グロウアース」での利用に結び付けました。

現在は電気・熱供給事業にも踏み出しています。

「大切な木を無駄にしない」という、誇りと気概が感じられます。

④未来の「心の土壌」を耕す

体育館や地域の振興センターなどの公共施設に木材を利用する取組も進めています。
直接的な需要を生むと同時に暮らしの中で木を身近なものにします。

しかし、木の使い先があり、加工する場所があっても、現場で作業をする「人」がいなければ循環は止まってしまいます。

そこで2019年、林業に携わる人材を育てるために日本初の町立「林業アカデミー」を設立しました。
県外への就職も認める柔軟な姿勢で、現場主義の教育を行っています。

さらに、こうした直接的な人材育成にとどまらず、遊歩道の整備木育プログラムを通じ、幼少期から森に関わる環境を作っています。

すべての子どもが木材関連産業に就くわけではありませんが、未来の世代の「心の土壌」を耕すことが、長い目で森を守り育てることに繋がるからです。

3.「始めないと始まらない」時間軸の先の風景

彼らの視座は、すでに次の世代へ向かっています。

2021年からは自ら育苗センターでの生産を始め、大手ゼネコンとの共同研究で苗木の安定供給体制づくりに努めています。

さらに2023年からの5カ年計画で、「カラマツ特定母樹増殖事業」に取り組まれています。
強度が強く構造材に向くうえ、初期成長が早いため下刈りの省力化にも繋がるカラマツ。
1070本の特定母樹を植栽し、約2.5ヘクタールの採種園を整備されています。

種を作る事業が実を結び、育った木が建物に使われるのは、何十年も先の話です。

その未来を、今この事業を進めている自分たちの目で見ることはできないかもしれません。
それでも「始めないと始まらない」と、実直に手を打ち続けています。

現在の経済圏の中での循環だけでなく、次の世代へ残していく、世代を越えた時間軸での循環
これが、日南町森林組合が取り組む「循環型林業」なのだと感じました。

講習会を終えて

種の確保から苗木の育成素材生産木材加工カスケード利用、そして未来への教育。すべてが繋がり、広がっています。

ここまで長期的な視点で確実に歩みを進められる秘訣は、「行政と一体となって進めること」だとアドバイスをいただきました。
各組織と行政が、方向性と歩みを合わせることが、最も確実で効率的な道筋となります。

持続可能な未来のために、広い視野周囲を巻き込む推進力、そして貪欲な探求心で技術開発や効率化を惜しまず続ける、まさに、クールヘッド・ウォームハートを感じる講演でした。

森林組合や地方行政が持つ大きな可能性を見せていただいた木村組合長に、心より感謝申し上げます。


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